LAST EDEN‐楽園のこども‐
一番ダサいやり方なんだよ」


那智は、ことあるごとにそんなことを言っていた。


「家庭に不満がある、学校が面白くねぇ。そんなのは、てめぇで何とかする力がない証拠さ」


「じゃあ、なんでお前はここにいるんだ」


まだ出会ったばかりの頃、涼は那智にそう訊ねたことがあった。


「その理屈で言えば、頂点に立ってるお前は、一番ダサい人間ってことになるぜ」


「言うね」


眩いぐらいにまっすぐな視線を自分に向ける涼に答えた自分の言葉を、那智は今でも覚えている。


痛いほど純粋な輝きを纏って自分を見上げる小さな少女に、那智は笑って言ったのだった。


「あたしがここにいるのは、弱い自分を確かめるためだ。傷ついた人間の傷に触れることで自分の傷を思い出して、足元がぐらつきそうになる自分を、笑い飛ばしてやるためだ。だから、お前の言ってることも、あながち間違っちゃいないね」


那智と親友になったのは、そのときだったと涼は思う。


怒るでもなく、虚勢を張るでもなく、それを自分の弱さだと言ってのけられる那智の強さに、涼は惹かれたのだった。
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