LAST EDEN‐楽園のこども‐
当然、多くの迷える少女たちの上に立ち、取り仕切る立場の人間が口にしていいことではない。


それでも、そんなものには興味がないといった風に穏やかに聞き流せる那智の懐の深さに、涼は心地よさを感じたのだった。


もちろん、そんなことは口に出さないが。


「未練があるなら、無理して上がることはないだろう」


「バカ言え」


那智は涼の頭を軽く小突く。


「潮時ってのがあんだよ」


って言っても、来年ぐらいまでは引っ張られることになるだろうけどね。


いかにも面倒だと言わんばかりに顔をしかめた那智を見て、涼は笑った。


「好きにしろよ」


そして、淡々と言う。


「お前がどうしようと、何を考えてようと、お前の勝手だね。あたしはただのギャラリーさ」


涼の辛口を聞き流しながら、那智はしばらく考え込むように口をつぐむ。そして、ふと考えあぐねたように空を仰ぐと、星の見えない濁った空に視線を彷徨わせた。


「一人で立ってみたくなってさ」


言って涼をチラッと見ると、含みのある眼差しを向ける。


「お前と同じようにね」


唇をニヤッと歪めた顔にからかいの意思を読み取って、涼はバーカと間延びした声を出した。


「それにしちゃ、時間かかりすぎだろうよ」


「うるせーな」


チッと舌打ちをすると、実に嫌そうな顔をして眉間にしわを寄せる。


「お前と違って、あたしは気が小せーんだ。一人ぼっちなんてもんには、生まれてこの方、お目にかかったことがねーんだよ」


「イバんな」
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