LAST EDEN‐楽園のこども‐
涼と話しながら、那智は思う。


涼が隣にいたからこそ、自分はこの場所で流されることも無かったのだと。


自分を頼らず、頼らせもしない涼が隣にいたからこそ、ずっと顔を上げていられたのだと。


「そういう意味じゃ、お前のおかげかもな」


瞬間、涼は瞳を大きく見開くと、直後、まるで人外の生物でも見るような目つきで、マジマジと那智を見つめた。


「気持ち悪いぜ。ハヤんねーんだよタコ」


「あぁ?お前今何つった?聞き捨てならねぇことを言いやがったな、コラ」


「バーカ」


ハンカチを貸し借りする仲ではない。


将来の夢や、好きなアイドルの話をするわけでもない。


けれど、涼と那智は友達なのだ。


絆という言葉の枠には入りきらない気持ちを分かち合った、かけがえのない存在なのだ。


「たまには学校行けバカ」


「お前こそ、たまには学校サボれよバカ」


そんな言い合いをしながら、夜の街を共有する。


出会った頃から変わらないスタンスで、二人は今宵も喧騒の中に、風のように紛れて溶け込んでいくのだった。
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