LAST EDEN‐楽園のこども‐

桐谷真斗

「あんたらもいーかげん、しつっこいよねー」


青蘭中生徒会書記にして、二年生ながらバスケ部エースの桐谷真斗は、先ほどから追いかけてくる他校の生徒たちめがけ、拾った小石を投げつけた。


「いてっ!」


「油断は禁物、ってね」


小石を額に受けて顔を押さえる少年に、悪びれた様子もなく「へへっ」と笑うと、真斗は走る速度を上げた。


「おっさきぃ!」


真斗はマイペースな人間だ。


あまりに自由奔放すぎて、時に先輩、特に龍堂から厳しくたしなめられることもあるが、基本的には可愛がられる存在である。


プライドが高く、勝利に対する執着心は人一倍。


生意気ではあるが、どこか憎めない。


それが、桐谷真斗という少年なのである。


しかし、それは学内での話に過ぎなかった。


学外での真斗の評判は、あまりというか、かなり良くない。


原因は、彼の試合内容にある。


試合中の真斗のプレイの荒さは、尋常ではない。


たとえ練習試合だろうが、相手の肩や膝を文字通り叩き潰してしまうラフプレイを、何度咎められたことだろう。


だから、学校の外に敵が多いことは真斗自身も少しは自覚している。


むしろ周りに言わせれば、闇討ちに至らなかったことの方が、不思議なくらいなのである。
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