LAST EDEN‐楽園のこども‐
参ったなー。


身から出たさびとは言え、めんどくさいことになったと思う。


もうクタクタなんだけどな、ボク。


真斗は、予想外の自主トレするはめになった我が身を振り返って、苦笑を浮かべた。


ま、これもエースの宿命ってやつですかねぇ。


不敵な天才は、どんな状況になっても、やはり不敵なままのようだ。


そんな調子で目下逃走中の真斗と、偶然涼が出会ったのは、センター街のはずれ付近だった。


道玄坂の先にある那智の家に赴いていた涼に、真斗が勢いよくぶつかってきたのである。


「おい」


涼は一瞬よろめくと、そのまま走り去っていこうとする真斗の腕をつかんで、強引に引きずり寄せる。


「人にぶつかっといて、詫びの一つもなしかよ」


そのとき真斗は、初めて自分が誰かにぶつかったことに気づいた。


「あ、ああ、ごめん。ちょっと急いでるんだ」


口先だけの真斗の謝罪が、涼を珍しくムッとさせる。


「ざけんなよ」


低い声で唸るように言うと、涼は眼差しを鋭く尖らせて、真斗を睨む。


「悪いことをすれば、ごめんなさいだ。人にぶつかりゃ謝るってことぐらい、小学生でも知ってるぜ」


「だから、ごめんって言っただろ?」


真斗は、まるで、そう言いたげな顔をしていた。


そのとき、坂の下の方から、追いかけてくる人間たちの声が聞こえてくる。
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