LAST EDEN‐楽園のこども‐
あちゃー、追いつかれちまった。


真斗は、心の中でガッデムと呟く。


彼らのいる場所からここまでは、もう目と鼻の先である。


どう考えても、逃げている時間はない。


「くっそ」


どうするか。


真斗は一瞬考えた後、何かを思いついたように大きく瞬きをする。


そして即座に涼に視線を戻すと、まだ不愉快そうな顔をしている涼の腕をつかんで、狭い路地の隙間に入り込んだ。


「悪い、ちょっと」


「あ?」


「悪いけど、少しだけ協力して」


瀬に腹は帰られない真斗は、言うなり涼の体を自分の胸に引き寄せ、ギュッと抱きしめた。


勿論、涼に一目ぼれして、高鳴る感情を抑えきれなくなったからではない。


多勢を相手に逃げ回るより、彼らを巻くことが得策だと気づいた真斗は、偶然出会った涼と、カップルのふりをしてその場をやり過ごそうと思ったのである。


だが、そんなこととは露とも知らない涼には、突然自分に抱きついてきた真斗は不審者でしかない。
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