LAST EDEN‐楽園のこども‐
真斗の話を聞きながら、涼は考えていた。


ぶつかって謝りもせず、今ですらありがとうの一言もないこの少年の、一体どこに真実があるのかを。


「迷惑だな」


真斗は大きく頷く。


「だろ!?」


「お前がだよ」


「え……」


涼の言葉に、真斗は意外そうな顔をする。


その罪悪感のかけらもない清々しい様子が、涼をさらに苛立たせた。


「お前なんかに世界を終わらされた奴が、気の毒で仕方が無いって言ってんのさ」


実際に見たわけではない。


一方の話だけで、正しい判断もできない。


けれど涼には、数人に追いかけられて必死で逃げている真斗より、怪我をしたという相手の気持ちの方が理解できるような気がした。


悪びれもせず、自分は無関係だと言ってしまえる真斗より、自分の可能性を奪われた人間の口惜しさの方が、想像するに容易かった。
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