LAST EDEN‐楽園のこども‐
「殴られちまえば良かったんだ」


「何てこと言うんだよ」


真斗は、心外だという顔をして涼を見た。


「ケガでもして、試合に出られなくなったらどーすんの。俺、これでも期待のエースなんだから。全国優勝がかかってるんだぜ」


「ケガ、ね」


涼は皮肉気に笑う。


「お前、さっきはたかがバスケができなくなったぐらいでって言ってたんじゃねぇのかよ」


「あれは……」


口ごもる真斗に、涼は心底軽蔑したような視線を向ける。


「他人がそうなるのは良くても、自分は嫌か。たいした奴だよ、お前は」


青蘭の誰ともつるまない涼は、学内の噂には疎い。


だから勿論真斗のことも、名前すら知らない。


それでも、涼は直感で感じる。


こいつはきっと、他人を蹴落として先に進める人間なのだと。

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