LAST EDEN‐楽園のこども‐
「変なのかな、俺」


真斗がうなだれるように睫を伏せる。


「そんなこと、俺、一度も言われたことない」


小さな頃から天才だと持て囃(はや)されてきた真斗には、こんな風に叱ってくれる人間は一人もいない。


だから、初めてそれを体験した真斗は、頭から冷水をかけられたようなショックを感じていた。


「俺の周りにいる人間は、一言もそんなこと言わないんだ」


「言われなきゃわからねぇのか」


涼は心底呆れたように真斗を見た。


「誰も教えてくれないからわからない、そんなのはガキの世界でも通用しない甘えだ。そんなことを口にしても恥ずかしくないって言うなら、どうかと思うぜ」


真斗も考える。


涼の言ったことに、改心したわけではないと。


そもそも、彼は自分が悪いことをしたという自覚すら持ち合わせてはいない。


だから、涼に何を言われても、自分には身に覚えの無い言いがかりに過ぎないはずだった。


けれど、涼の飾り気の無い言葉は、深く沁み込んでいくのだ。


冷めた真斗の心を揺り動かすように、深く深く、入り込んでいくのだ。
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