LAST EDEN‐楽園のこども‐
「殴られてみろよ、一度ぐらい」


決して冗談ではないその言葉も。


「痛みの一つも知らずに生きてるより、そっちの方が、何倍もマシさ」


そう言いながら見せた、寂しそうな横顔も。


涼が言ったことのすべてが、ひどく特別なもののように感じる。


それは、新しい世界に触れた、高揚感だったのかもしれない。


未知の領域に足を踏み入れた、新鮮さゆえだったのかもしれない。


けれど真斗は、そのとき、確かに自分の中で何かが変わる音を聞いたような気がした。


それが何を意味するのか真斗自身にもまだわからないが、今までの自分に足りなかった欠片を埋めてくれそうな予感を、真斗は感じていたのだった。
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