LAST EDEN‐楽園のこども‐
「心配してやった挙句にバカ呼ばわりされちゃ、さすがのあたしも立つ瀬がないね」


その眼差しだけで、何人もの人間が恐れおののく黒い瞳に浮かび上がる、暗い影。


それは、きわどい修羅場を何度も潜り抜けてきた人間だけが持つ、闇の色だった。


龍堂同様、幼い頃からバスケの世界で健全な汗を流してきた真斗には、暗く輝くその闇のような瞳とまともに目を合わせることすらできない。


だが、涼は那智の視線を真正面から受け止めると、皮肉気に頬を歪めて、ニヤッと笑って言う。


「とうとうヤキが回ったんじゃねぇのか」


真斗は息を呑む。


どう見ても、相手は堅気の世界から半歩踏み出している人間である。


しかも、自分の好意を頭から否定されて、いたくご立腹の様子である。


こんな状況で、そんな挑戦的なことを言うなんて、自殺行為ではないのか。


真斗は、これから目の前で繰り広げられるであろう攫(つか)み合いの乱闘シーンを想像して、青ざめた。
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