LAST EDEN‐楽園のこども‐
三年にあがって今のクラスになったとき、ミウはそれまで仲の良かった友人たちと離れ離れになった。


様々なコース編成が実施される青蘭大では、世間では受験と呼ばれる小6、中3の二度に渡って、大規模な進路希望考察が行われる。


文系を希望したミウが、その成績によって文系のトップクラスであるA組に振り分けられたとき、彼女は友人たちと別れる現実が寂しくはあったが、不安を感じたりはしなかった。


社交的で誰からでも好かれるミウは、それまで他人とケンカすることもなければ、誰かに嫌われる経験もなかったからである。


だから彼女は、新しいクラスでもすぐに馴染んでみんなと仲良くなれると思っていた。


しかし、目の前の現実は、幸せだったミウにいきなり辛酸の日々を突きつけることになる。


最初にミウが異変に気づいたのは、5月。


GW目前の青葉の頃、自分の財布の中から数枚の札が無くなっていることを知った彼女は、その事実を当然担任に打ち明ける。


だが、優秀だと保護者の信頼も厚い教師は、「何かの間違いだ」とミウの申し出を即座にはねつけた。


「青蘭大の生徒に、他人の物を盗るような汚らわしい人間は存在しない」と。


担任自身も、誰かが盗った可能性を疑わなかったわけではない。


生徒のことより身の保身を最優先する彼にとっては、勉学以外のゴタゴタは勘弁して欲しかったのである。


ゆえに、担任はミウの不安を無視すると、ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべて、こう言ったのだ。


「お前の数え間違いじゃないのか?」


その言葉に、ミウは少なからず絶望した。
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