LAST EDEN‐楽園のこども‐
「どうして?」


水に濡れてページの張り付いた教科書を胸に抱きしめながら、彼女は泣いた。


これから自分の身に降りかかるであろう現実を予感して、逃げられない恐怖と戦慄に震えながら、声を押し殺して泣いたのだった。


ミウの予想は、それから間もなく現実のものとなって彼女の目の前に現れた。


目を離したすきに、机の中に腐った牛乳がぶちまかれていたこともある。


ロッカーで着替えている姿を写真に撮られて、先生が来る前に黒板に貼られていたこともある。


すれ違いざまに体をぶつけられ、唾を吐かれ、そして―――――。


開始から一ヶ月後。


ミウを標的にしたいじめは、「ゲーム」と名づけられた暴力行為に至るまでにエスカレートしている。
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