LAST EDEN‐楽園のこども‐
ミウは辛かった。


暴力を受ける体が痛かったのではない。


このことを話せる相手がいないことが、辛かった。


そして、誰もかばおうとする人間がいなかったことが、何よりも辛かった。


学内に、ミウの味方は一人もいなかった。


徐々に残忍性を帯びていく嫌がらせの波及を恐れて、仲の良かった女子までもがミウのそばから離れ、今ではクラス中がミウを無視している。


頼れない担任はおろか、ミウはそのことを、他のクラスの誰にも相談しなかった。


できなかったのである。


陰口を叩かれ、クラス中から無視され、そして今では暴力を振るわれるほどにエスカレートしたいじめの実態など、誰が好んで言いたいだろうか。


それは、彼女の最後の自尊心だった。


だが、ミウの理性を必死でつなぎ止めているそのプライドですら、今では揺らぎそうになっている。


普段の教室では、誰もミウに話しかけない。


昼食のときも、ミウの机には誰も寄り付かない。


ゲームのとき以外は、全員が結託してミウの存在を消すのだ。


まるで透明人間のように、そこにいても見えない振りをするのだ。


その耳は音を聞いて、その目は物を見て、その口は確かに言葉を紡ぐのに、ミウはゲームのときだけしか存在することを許されないのだ。
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