LAST EDEN‐楽園のこども‐
そんな屈辱を受けてまで、ミウは生きていたいとは思わない。


死んじゃおっかなー……。


心も体も疲れたミウが、ふとそんなことを考えたとき。


廊下に視線を向けたミウの視線が、ある一人を見つめて釘付けになる。


あの人……。


ミウの眼に映ったのは、一人で次のクラスへと移動する涼の姿だった。


寂しくないのかな、一人で。


ミウは、颯爽と前を向いて歩く涼の背中を目で追いながら、そっと心の声で呟く。


あたしは寂しいよ、すごく。


話せる人もいなくて、助けてくれる人もいなくて、すごく、すごく寂しい―――――。


受け取り手のないミウの叫び。


誰にも届かない心の声は、いつものようにそっと胸の中にしまわれていく。


こうやって、どれだけの言葉の数を彼女は飲み込んだことだろう。


孤独に胸を痛めた少女は、そして儚げに微笑んだ。


透明人間だから、死んだって誰も困らないよね。

無邪気な子供たちの悪意によって心を切り裂かれた少女は、それでも懸命に生きようとしていたミウは、そのとき初めて自身の理性が壊れていくのを、頭の片隅で感じていた。
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