LAST EDEN‐楽園のこども‐
佐伯悠仁
「失礼します」
涼はその日の午後、職員室を訪れていた。
先日担任に言われた通り、進路希望調査の紙を持ってきたのである。
だが、担任は涼の予想通り、紙を手に取ると頬をわなわなと震わせて叫ぶ。
「雨宮!」
そして、手渡した紙を彼女の顔めがけて投げつけると、額に筋を浮かせてさらに怒声を上げた。
「何だこれは!?」
「進路希望調査票です」
「そんなことはわかってる。俺が聞いているのは、お前は何を考えてるのかということだ!」
担任は、周囲が振り返るほど大きな音で机をバンと叩くと、耳をつんざくようなカナキリ声を出した。
「白紙じゃないか、馬鹿者っ!」
目の前でわめき散らす担任に冷めた視線を向けながら、涼は思う。
錯乱したんじゃねぇのかこいつ。
たかが紙切れ一枚にムキになって、恥ずかしくないんだろうか。
それでも担任は顔を真っ赤にさせたまま、半狂乱で叫ぶ。
「この、クズが!」
狂ったように怒鳴る姿は、同情を誘うぐらいにみっともない。
喉に込みあがってくる失笑をかみ殺すと、涼は平然とした態度で、大げさな溜息をつく担任を見下ろしていた。
涼はその日の午後、職員室を訪れていた。
先日担任に言われた通り、進路希望調査の紙を持ってきたのである。
だが、担任は涼の予想通り、紙を手に取ると頬をわなわなと震わせて叫ぶ。
「雨宮!」
そして、手渡した紙を彼女の顔めがけて投げつけると、額に筋を浮かせてさらに怒声を上げた。
「何だこれは!?」
「進路希望調査票です」
「そんなことはわかってる。俺が聞いているのは、お前は何を考えてるのかということだ!」
担任は、周囲が振り返るほど大きな音で机をバンと叩くと、耳をつんざくようなカナキリ声を出した。
「白紙じゃないか、馬鹿者っ!」
目の前でわめき散らす担任に冷めた視線を向けながら、涼は思う。
錯乱したんじゃねぇのかこいつ。
たかが紙切れ一枚にムキになって、恥ずかしくないんだろうか。
それでも担任は顔を真っ赤にさせたまま、半狂乱で叫ぶ。
「この、クズが!」
狂ったように怒鳴る姿は、同情を誘うぐらいにみっともない。
喉に込みあがってくる失笑をかみ殺すと、涼は平然とした態度で、大げさな溜息をつく担任を見下ろしていた。