LAST EDEN‐楽園のこども‐
顧問の戻りを待つ間、これでもかとばかりに浴びせられる怒鳴り声に、他人事ながらこめかみが疼く。


無論、彼も己に関わりのない問題に、敢えて口をはさもうとは思っていない。


だが、涼の担任が涼に発した刺々しい言葉の数々が、冷静な佐伯の心に影を落とした。


心無い言葉が、冷めた佐伯の心に憤慨という感情を呼び起こしていた。


仮に涼が腐った人間であったとしても、本当に救ってやろうと考えているならば、本人に向かって「お前は腐っている」と言うだろうか。


救ってやる気が少しでもあるのならば、その生徒をクズ扱いなどするだろうか。


それとも、人間はそんなに強いと過信しているのだろうか。


人の心は敏感だ。


激しい言葉で叩かれれば、痛みを感じる。


乱暴に踏みにじられれば、怒りがこみ上げる。


目には見えなくとも、切り裂かれた傷からは、血が流れるのだ。
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