清水君の嫌いなヒト
『…今日はこのぐらいでいっか』
「終わり!?やったー!」
シャーペンを文字で黒く染まったノートの上に放り投げて
そのまま両手を上に上げて伸びをした
あー背中がぼっきぼき音が鳴るよ
同じ体勢でずっとやってたからなぁ
ふと窓を見ると
ガラスに自分の顔がはっきり映るぐらいに暗くなっていた
『ほら、さっさと片付けて
僕が家に帰る時間が遅くなるでしょ』
「家?…え?」
『…送っていくって事だよ』
後ろを向いてコートを着始めた清水くんの耳はほんのり赤い
なんだかそれが妙に気恥ずかしくて、嬉しかった
意識しているのは、私だけじゃないらしい
私はにやけながら荷物をまとめた
キャメル色のダッフルコートを上に羽織ると
先に部屋を出て行った清水君の後を追いかけた
『あれ?もう帰るの?』
廊下でひょっこり顔を出されたのは
清水君を大人にしたようなワイルド系のお兄さん
「あ、えっと…お邪魔しました」
ぺこりと頭を下げると
清水君が『兄貴なんかに頭下げる必要ないよ』と横槍を入れてきた
そうか、この人は清水君のお兄さんなのか
『榊さん?…で、いいのかな
咲良の兄の嵐です』
「榊天和と申しますっ!」
今度は勢いよく頭を下げた
そしたら清水君にぺしっと頭を叩かれた
『だから頭下げなくて良いって、ただでさえ少ない脳みそが減るよ』
『咲良は愛情表現苦手だけど、君にべた惚れだから心配しなくて良いよ
昨日も大慌てで部屋片付けて…『嵐っ!マジでいい加減にしろよ!』
二ヒヒと笑いながら清水君をおちょくる嵐さんは
…絶対に清水君と同じ血が流れてると思った