デッドライン
すると必然的に囚人の方に目が行ってしまう。

半信半疑で見つめるポリデの内面では嬉しさがあった。



「初めて、喋った。」



ポリデが研究してから一度も成果がない。この男に関しての記録には喋った等の事は記入されてなかった。

今、やっと成果らしい成果が出たのだ。



「なんと喋ったのだろうか?」



高潮する胸を抑えながらポリデは囚人の言った言葉を記憶の中から探す。


「呼吸音に紛れて聴こえた声・・・確か―」


「『消えた・・・』?」



何のことだろうか?と頭を捻るが何も出ないのは変わりなかった。
ポリデはもう一度耳を澄ますがコボコポと空気が上に行く呼吸音しか聞こえない。



「気の、せいなのか・・・」


しょげるポリデ。
期待の輝きを満ちてた瞳は絶望の色を映してた。



「教授、失礼します」



スピーカーから聞こえる若々しい声と共に厳重に閉められていた魔法の扉が大きな機械音を立て開かれた。

ポリデはすぐさま水槽から手を離し、数十メートル離れる。


扉の向こうから現れたのはダークブラウンの長髪のすらりとして長身の男、ポリデの助手・カルト。



「時間、か・・・」


「はい」



ポリデは自分の着ていた白衣をひらりと靡かせ、水槽に背を向け、一息ついた。
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