発情クライシス
ポツポツと窓硝子に滴が垂れる。
「……」
「屋上、行くの?」
「いえ…濡れるのはキライです」
「そっか、良かった。僕も」
……うぅ。笑う先輩が眩しい。
屋上へは行けなくなったものの、だからと言ってあらゆる視線が集中するこの教室でお弁当を食べる勇気はわたしには無い。
「ね、ヒナちゃん」
「はい…?」
「行こうか」
「え?…って、先輩!ちょっと待っ…!」
突然手をとられてスタスタ歩き出した先輩に小走りで着いて行く。
ああ…、やっぱり今日もこうなるんですね……。
何を隠そう、お昼に先輩に連行されるのは最早日常茶飯事。
高身長の先輩に半ば引き摺られるように廊下を移動する光景も既に慣れっこなのです。ああ、視線が痛い。