発情クライシス
その感触を確かめる程の時間はなくて、一瞬の出来事だった。
目の前に見えるのは綺麗な茶色。
透き通った茶色。
ゆっくりと離れていく茶色。
楽しそうな、ミナ先輩。
「かわい」
嬉しそうな、ミナ先輩。
「えぇええええっ!?」
「どうしたの、ヒナちゃん」
「どどど、どうしたのじゃないですよ先輩っ!今何して…っ」
「あ、うん。ついてたよケチャップ」
「口で言ってくださいよぉー!」
“何か”の正体はおそらくミナ先輩の唇で。
わたしに付いていたケチャップを取ってくれたらしいのだけれど、
……言ってくれれば自分で取ったのに!
わたしにミナ先輩の思考が全く読めないのは今に始まったことではないけれど!