発情クライシス


先輩の声に少し視線を投げかけて、わたしは走り出した。


もちろん、先輩たちとは反対の方向へ。


「ヒナちゃん!?……ちょ、ごめんミイコッ…!」

「はいはい、早く行きなさい。リツには私から言っとくから」


話し声なんて全て無視。


風をうけて舞う自分の茶色い髪。

なぜか無性にその色が嫌になった。



「……ヒナちゃん!!」


ーーパシッ


グイッと後ろに引っ張られた。

手首に感じる体温が、痛いくらいに心臓に染みた。


「良かった、追いついて……」


ホッとしたようにそう息をついた。


どうして、

どうしてどうして!




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