発情クライシス


「うん。ごめんね、ヒナちゃん」


離れた距離をまた埋める先輩の優しい腕。

やめて。やめて。


苦しいのに、もう一度距離をとることはできなかった。


「ごめん」


謝りながら、先輩はまるで子供をあやすかの様にわたしの髪を撫で続ける。

すると、バカみたいにぼろぼろ流れていた涙は、先輩の制服をびしょびしょに濡らして止まった。


「ヒナちゃん?良かった、泣きやんだね」


やんわりと微笑む先輩の顔を見て、冷静になってきたわたしを次に襲ったのは盛大な羞恥。


「せ、先輩…、ごめんなさいわたしっ」

「待って、ちゃんと聞いて?」


顔を包まれ、かち合った瞳。
青みがかったそれはこの空よりもわたしを惹きつける。




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