発情クライシス



「ねぇ、ヒナちゃん」

「は、はい…」

「さっきの子は只の幼なじみだよ」


目を合わせたまま、先輩はそう言った。


……幼なじみ?彼女さんじゃなくて?


「しかも今からもう一人の幼なじみに会いに行くところだったし」


……もう一人の幼なじみ…。


「あ、そいつは男だけどね」


……。


「因みに“彼女”じゃないよ」

だって、ミイコはアイツのものだからね。


少し寂しいような嬉しいような、そんな複雑な表情で先輩は笑う。


「それに、好きな子は別にいるし」

「え…?」

「…ねぇ、ヒナちゃん」


突如近づいてきた先輩の顔。
ぼやけて、ぼやけて。



「ーー苦しい原因、僕なら取り除けるよ?」



不敵に笑ったその顔は、今まで見たこともなかったのに。

あまり見えなかったのは、ぼやける程のその距離と


閉じてしまった瞼のせい。





end.

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