キミのとなり。
それから仁の携帯に何度か電話をしてみたけれど、一度も繋がる事はなかった。


仁が部屋に帰ってくることもなく、気がつけば数ヵ月が過ぎていた。


テレビや雑誌、街角のポスターなど、皮肉にも仁に会える場所はたくさんあったけど、やっぱりちゃんと直接話しがしたい。


そんなある日の事だった。


“ガタッガンガンガンッ”


“ドシンッ!”


なっなんだぁ…?


今日は休みだというのに、朝から隣りが騒がしい。


誰もいないはずの仁の部屋から何故か物音がする。


あれっ!?


私はパジャマ姿だという事も忘れ、慌てて玄関のドアを開け隣りを覗き込んだ。


何やら作業着姿の男達が次々に仁の部屋から荷物を運び出している。


まさか…引っ越し!?


目を懲らして仁の姿を探したけれど、仁は部屋にはいなかった。


「ちょっとそこ!荷物運ぶ邪魔になるから。」


夢中で部屋を覗いていると、後ろから作業中の男性に声をかけられた。


「あっ…ごめんなさい!」


どんどん仁の部屋から物がなくなっていく。


もうこれで、二度と会えないかもしれない。


私は勇気を出して荷物を運び出そうとしている男性に話を聞いてみた。


「あのっ……ここに住んでた人は来てないんですか?」


「あぁ、来てないよー勝手にやってくれってさ。」


「引っ越し先とかわかりますか?」


「悪いけど、個人情報だから教えられないよ。」


「そう……ですか。」


きっと事務所の人に口止めされているんだろう。


見る見るうちに仁の部屋は空っぽになった。




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