キミのとなり。
涙の結婚式
春が過ぎて夏が来る頃、私はこのマンションへ越して来て一年を迎えた。


そういえば若菜ちゃんもあの後、ケンチャンを引きずって落ち込みっぱなしだったけどあれから半年、もう新しいサーファーの彼氏をみつけ幸せそうにしている。


ケンチャンの事なんてどこへやら……。


ケンチャンが知ったら泣くだろうな。


マイクロシティはというと、どんどん活躍の場を広げ最近はCMでも見掛けるようになった。


海外メディアからも注目を浴び、韓国にも進出が決まったらしい。


テレビを通して見る仁は、少し身体も引き締まって髪も伸びていて……


また少し大人っぽくなったみたい。


あの『幸福の扉』がヒットチャートを駆け巡り、未だにトップ10にランクインしている。



実は密かにCDも購入した。


ジャケットに写るメンバー。


一際目立つ仁。


仁は毎日どんな風に過ごしているかな。


無理はしてないかな……。


会えなくなって半年以上経つのに、毎日そんな事ばかり考えている。


ある9月の晴れた日――


朝から美容院に走り大忙し。


ヤバイ!


時計を見ると9時を回ろうとしていた。


実は今日某有名ホテルで晃と晶子の結婚式が行われる。


私は履き慣れないハイヒールにピンクのワンピースを着て急いで電車に飛び乗った。


はぁ……、なんとか間に合いそうだ。


ふと、車窓に写る自分を見る。


なんだか疲れた顔してるな、私……。


ちょうど私の真横に二人組のOLが座っていた。


なにやら、天上を指差し騒いでいる。


「私はドラムのケンかな!」


「え~絶対ジンだよ!」


間違いなくマイクロシティの事を話しているようだ。


彼女達が指差した方を見ると、ちょうど電車の雑誌広告のポスターにマイクロシティがデカデカと載っていた。


あぁ、あれか……。


鏡を取り出して髪をチェックしている間も、彼女達の話しが耳に入ってくる。



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