キミのとなり。
「え?」


「本気で、やり直してみないか?」


はっ……!?


やり直す!?


「絶対もう浮気なんかしないし、まっすぐ千秋だけを見るって約束する。」


「やっ……ちょっと待って。」


「まだ怒ってる?」


「怒ってるとかの問題じゃないよ!」


弘人はうつむいて聞いてきた。


「あの男とはどうなの?」


あの男?


「遊園地で……」


あぁ、そうか。


そういえば遊園地で会った事があったな。


あの時は、まだ弘人の事で落ち込みっぱなしで塞ぎ込んでたんだよね。


隣りに仁がいてくれて本当救われた。


「まだ続いてるの?」


「……。」


「後で知ったんだけど、あいつ……マイクロシティのジンだったよな?」


「あいつなんてっ……、言わないで。」


「えっあ……ごめん。」


気まずい空気が二人を包んだ。


なんだか落ち着かない。


やっぱり隣りにいて欲しいのはこの人じゃない。


仁なんだって実感した。



「諦めないよ俺!」


真顔で私を見つめる弘人。


「一度は愛し合った仲なんだ、不可能な事じゃないだろ。」


愛し合ったって……恥ずかしいんだけど。


「よし!また誘うわ。」


そう言って立ち上がった。


「えっ!待ってよ。」


弘人は勝手に納得して去ろうとする。


「聞いてる!?」


「今度は俺が追い掛けるから……」


「えっ?」


ゆっくり足を止めて振り返る。


「あの時、千秋が夢中で追い掛けてくれたみたいに……今度は俺が追い掛ける。」


「……。」


私を見つめる眼差しがあまりに真剣で一瞬ドキッとした。


「じゃあ。」


軽く手を振り、弘人は屋上を後にした。


一人取り残された私は、空を見上げて考えた。


仁は今どこで何をしてるんだろう?


私の事を思い出してくれる時はあるのかな……。


同じ空の下にいるはずなのに会えないなんて。


顔も声も……


もう、忘れそうだよ。


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