キミのとなり。
振り返ってみると、思った通り若菜ちゃんが彼氏と一緒に来ていた。


どこにでも現れる子だな。


「先輩も来てたんですか~?」


「う…うん、ちょっとね。」


「一人ですか?」


「ちょっと寄っただけ、もう帰るとこだから。」


よく考えたらこんな所、一人で来る場所じゃないな。


さっさと帰ろ。


私はその場を足早に去ろうとした。


「あっ!さっき見ましたよ!」


若菜ちゃんがそう私を呼び止めた。


「見たって何を?」


「マイクロシティに決まってるじゃないですか~、っていうか、シークレットライブ見に来たんじゃないんですか?」


え……


私は若菜ちゃんの両肩をガシッと掴んだ。


「きっ来てるのっ!?今ここに?」


「いっ…痛いですよぉ。」


我に返り手を離す。


「あっごめん。」


「先輩知らなかったんですか?今日が最後らしいですよ!ここでのライブ。」


最後の……


ライブ……


若菜ちゃん達と一緒に、僅かなスペースを見つけ、開演を待つ。


「友達にマイクロシティのファンの子がいるんですけど、その子の話しだと本格的に海外でも活動を始めるらしいって……だからここでのライブはプロとしてはこれが最初で最後だって。」


海外へ行くんだ……。


神様は意地悪だな。


どれだけ私達を引き離せば気が済むのかな……。


「見納めですね、これで。」


若菜ちゃんがそう言った直後、会場の照明が落とされた。


会場には悲鳴に近い歓声が響き渡る。


そして足音がして真っ暗なステージにマイクロシティが出て来た。


仁……


仁……


前触れもなく曲が流れ始めた。


そしてステージにスポットライトが照らされ、そこには“あいつ”がいた。


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