キミのとなり。
「一体どういうつもり!?困るんだけど!」


驚いて振り返ると、胸の前で腕を組みこちらを睨み付ける人物がいた。


あの事務所の女性だった。


「もう会わないって言ったわよね!?」


何も答えられなかった。


女性はどんどん距離を詰めてくる。


「だから反対したのよ!地元でライブなんて!」


え……


「どうしてもやりたいってジンが頭下げるから、渋々了承したのに。」


仁が頭を…?


「やっぱりやるんじゃなかったわね!とっとと海外に行かせるべきだってこれでハッキリしたわ。」


せっかく仁が頭を下げてまでしたライブだったのに、悪いことしちゃった……。


「すいません…でした。」


深々と頭を下げて走り去った。


仁に会えるかもなんて……


浮かれてた自分が情けない。


“仁の夢は私の夢だよ”なんて……


どうして言っちゃったんだろう。


結局邪魔ばかりして、自分の事しか考えてない。


もう……卒業しなきゃいけない。


きっと……いつまでもここで立ち止まっていても仕方がない。


仁はどんどん先へ行くのに、私だけ取り残されてしまう。


いつまで待ってても仁はもう来てはくれないよね……


一つの決意が私の中に生まれようとしていた。


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