キミのとなり。
「神田さんが言い出したんですよ?子供みたいに一人で盛り上がっちゃって。」


イヤイヤ、あんたも充分盛り上がってたから……。


「楽しみですね!」


ったく、なんでも勝手に決めちゃうんだから。


まぁ、たまにはいっか……


一人で誕生日ってのも寂しいしな。


午後6時――


終業の時刻になるなり、若菜ちゃんは携帯で誰かと話し出した。


「りょうかぁい!」


そう言って電話を切る。


「神田さんも、もう終わったみたいですよ!ロビーに行きましょ!」


私以上に張り切る二人。


私は若菜ちゃんに手を引かれて一階ロビーへ向かった。


玄関口で私達を待っていた弘人は、私を見て優しく微笑んだ。


ドキッ……


昔からその笑顔に弱いんだよな。



帰りに三人で食材を買いにスーパーへ立ち寄った。


「何するの?」


「鍋ですよぉ。」


ネギを片手に答える若菜ちゃん。


鍋かぁ……


あっ……いけない。


また思い出しそうになった。


両手いっぱい買い物袋を持って私のマンションへ向かった。


「何階でしたっけぇ~重いよぉ。」


「買い過ぎじゃない?」


「俺もう一つ持つよ。」


そんなやり取りをしている間に、エレベーターの扉が開いた。


私は歩きながら鞄の奥の鍵を探していた。


すると、弘人が口を開く。


「……あれ、なんかドアの所に掛かってる。」


「へ?」


そう言われて部屋のドアに目をやる。


「あっ本当だ。」


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