キミのとなり。
足を絡ませながらも夢中で走った。


そのうち、ふと我に帰る。


“ハァハァハァ…”


で…でも、どこに行けばいいんだ!?


カードを手に握りしめたまま、行く宛もなく足を進めた。


事務所……!


こうなったら一番居そうな場所に行くしかないか…。


走って走ってただひたすら走った――


事務所に着くと、何故か周辺はこの前と違い静まりかえっている。


おかしいな……、この前はあんなにたくさんファンが取り囲んでいたのに。


たぶん今ここに仁はいないんだろうな……


そんな予感を胸に、勇気を出して事務所のドアに手をかけた――


“ガチャン”


「あの……」


中にいたのはあの佐田という女性だった。



佐田さんは私に気付くなり険しい顔を見せたが、ゆっくり立ち上がり近づいてこう言った。


「あら、またあなた?懲りないわね。」


胸の前で両腕を組み、首を傾げてこちらを睨み付ける。


ひっ怯むな、私!


「あの……、すいません。いけない事してるのはわかってるんですけど。」


「中へ入ったら?」


「えっ?」


やけに優しい対応に、益々嫌な予感がした。


「あの…っ仁は、」


「ここにはいないわよ。」


「どっ、どこに行けば会えますか。」


教えてくれるはずない……


そう、わかっていても私の口は勝手に仁の居場所を聞こうとする。


すると、佐田さんは不気味な程優しい笑顔で天上を指差し答えた。


「今頃、空の上かしら。」


えっ……


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