キミのとなり。
私は少しづつ彼らのいる所へ近づいて行く。


すると柱に隠れて見えなかった一人の人物の背中が見えてきた。


“ドキッ……”


見覚えある背中だった。


その背中はゆっくりこっちを振り返る。


「……。」


懐かしい胸のときめきが蘇ってくる。


間違いなくそこに居たのは


――仁だった。


仁は、何か物凄いものを目撃したかのような顔で私を見ていた。


目が合っただけで、もう既に泣きそうだった。


「紹介しまぁす!千秋ちゃん、ジンの彼女!」


「……えっ!?」


ケンチャンは私の背中をポンッと叩いてそう言った。


仁は座って煙草をくわえたまま何も言わず、恥ずかしそうな私の顔を見つめていた。


「初めまして、ギターのアツシです!」


「どもっ!ベースのショウゴです。」


そう言って二人の男性が立ち上がる。


うわ~テレビで見た顔だ!


なんて思いながら私も慌てて挨拶する。


「こっ…小原千秋です!」


みんなテレビで見るより愛想がよくて楽しい人達だった。


「まぁ座んなよ!」


私はケンチャンに言われるまま、仁の横に腰掛けた。


こんなに真横に仁がいるのは何年ぶりだろう……。


不思議と幸せな気持ちになる。


どれだけ経っても変わらない。


やっぱり仁の隣りは居心地がいい……。


チラッと横を見ると、グラス片手に私に優しく笑いかける仁。


初恋の時みたいに、それだけで胸がキュンとなる。


その仁の変わらない優しい笑顔に私の顔も自然と綻んでしまう。


言葉はなくても伝わる気がした。


「何、見つめあっちゃって~!」


ケンチャンが目と目を合わせる私達をみて、からかうようにそう言った。


私の顔は見る見る内に真っ赤になる。


だけど、とっても幸せな気分だった。





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