キミのとなり。
しばらくして、ケンチャンが私にある質問をした。


「あっねぇねぇ、若菜ちゃんって元気!?」


「えっ……あぁ。」


「やっぱまだ怒ってる?」


「いやぁ……」


仲良く長崎で彼氏と同棲してますなんて……とてもじゃないけど言えないっ。


「やっぱまだ怒ってるよなー。あん時も相当泣かれたもんな。」


実際は半年後には新しい彼氏が出来てたんだよねー。


すると、さっきまでただ黙って飲んでいた仁が初めて口を開いた。


「もう他の男がいんだろ。」


久しぶりに聞いた声……


昔と変わらず無愛想だけどなんだか安心した。


「そっかーやっぱ遅いよなぁ。」


ぐったりともたれ込み、落ち込むケンチャン。


“ブーッブーッブーッ”


その時、仁の携帯が鳴った。


嫌な記憶が蘇ってくる。


仁はテーブルの上で騒がしく踊っているその携帯に手を伸ばした。


“ピッ”


「お疲れさまです。」


メンバーも仁の反応に息を飲んでいる。


「えっ……今っすか?」


ケンチャンは両手で大きく×を作っている。


「今メンバーで飲んでますけど……はぁ、あぁ……はい。」


“ガチャッ”


仁が電話を切ると同時に、メンバーが身を乗り出した。


「佐田っち?」


さっ佐田っち…!?


コクッとうなずく仁。


「……今から打ち合わせだから来いって。」


「っんだよぉ!人がせっかく楽しんでる時にぃー。」


ふて腐れるケンチャン。


なんだ……またか……。


そう思いかけた時、仁がニヤッと笑ってこう言った。


「サボっちゃう!?」


え?


ケンチャンも他のメンバーもそれに乗っかるように後に続いた。


「おっそれいいねぇ!」


「よし!飲むべ!!」


そう言ってまた乾杯し始めた。

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