キミのとなり。
夢中で走っている間に、なんだか周りが騒がしい事に気付いた。


“あれジンじゃない!?”


“本当だぁ~マイクロシティのジンだ! なんで走ってるのかなぁ?”


“ってか女連れてるよぉ!?”


すれ違う女の子達がそう話しているのが聞こえた。


しばらくして仁はビルとビルの間に隠れようとした。


私も慌てて身を潜める。


“ハァハァハァハァ…”


“ハァハァハァハァ…”


その狭い空間に私達の荒い呼吸の音だけがこだまする。


「……。」


「……。」


『プッ!』


思わず顔を見合わせて吹き出した。


「こんなに走ったの小学生以来だよぉ~ハァハァ…」


「ハハッ俺も。」


しばらく笑いが止まらなかった。


お互いの息が落ち着くのを待つ。


徐々に冷静さを取り戻すと同時に“自分の隣りに仁がいる”という実感がフツフツと湧き出て来た。


なんだか周りから切り離されて、ここだけ違う世界のような静けさ。


「おかえりなさい。」


それは、私の口から自然と出て来た言葉だった。


「ただいま。」


仁はそう答えた。


そして仁はギュッと私を抱きしめた。


「やっべぇ……超会いたかった。」


その飾り気のない言葉にもう涙を押さえる事は出来なかった。


私は仁の背中に手を回し力いっぱい抱きしめた。


“ギュッ…”


「会いたかったよぉ……」


やっとたどり着いた。


私の大好きな場所。



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