キミのとなり。
「ちょっと~仁!私仕事だから行くよ!?タマに餌、ちゃんとあげてよね!」



「……。」



私の問い掛けに仁は布団の中から手を出してハイハイと随分なご挨拶。



ったく!大丈夫かなぁ。と後ろ髪を引かれる思いで寝室を出た。



ちなみに、タマというのはそう!あの子猫である。



仁が雨の日に拾って、私達を急接近させた言わば恋のキューピッドと言っても過言ではない存在。



タマがいなかったらもしかすると私たちはこうはなっていなかったのかもしれない。



仁が有名になってからというもの事務所で飼われていたんだけど、このマンションに引っ越して来て私が一緒に住むようになって以来また引き取って飼っている。



もっぱら餌やりは家に居る事の多い私の仕事だけど。


ゆっくり玄関のドアを開き顔を出して左右を確認。



誰もいない事を確認して、素早く鍵を締めエレベーターへ猛ダッシュ。



エレベーターから降りる時、再び左右を確認し広いエントランスから物影に隠れながら外の世界へ。



私はこんな忍者のような生活を半年も続けている。



別に悪いことをしているわけでもないのになんでコソコソしなくちゃなんないんだ!



本当はコンビニでマイクロシティが載っている雑誌を立ち読みしているにOLさんに後ろから言いたい!



街角でマイクロシティのポスターに群がる女子高生達に大声で言いたい。



《ジンは私の彼氏よ!!》



って……。



だけどそれだけは許されない。夢を売る仕事である以上、世間ではみんなのジンであり私の存在など掻き消されている。




それでもいい。



仁がそばにいてくれるならなんだって我慢できる!



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