キミのとなり。

勤務を終え、帰り際に近所のスーパーで買い物を済ませマンションへ帰る。



チラチラっ



ササササッ……



やっぱり忍者走り。



ガチャッ



誰もいない事を確認した後私は玄関のカギを開けた。


「……ただいまぁ。」



『ミャア～！』



私を出迎えてくれたのはタマだった。



「何？ご主人様はまだお眠！？」



スタスタと廊下を歩き寝室のドアを開けた。



「コラ仁！」



しかしそこに仁の姿はなかった。



あれ？出掛けたのかな？



リビングに戻ると、テーブルの上に仁が残して行った置き手紙を発見した。



大きな紙に乱雑にただ一言《仕事が入った、出掛ける。》と書かれていた。


なんだよぉ～バッドタイミングー。



一気に力が抜け思わず重い買い物袋を床に落とした。


はぁ～今日はジンの好きなビーフシチュー作ろうと思ってたのになぁ……。



『ミャ～オ』



その様子を見て私を心配したのか甘えた鳴き声で足元にまとわりつくタマ。



「……今日もまたお前と二人でご飯だね。」



私が頭を撫でてやるとタマはそれに答えるように元気に鳴く。



こんな時一人じゃなくてよかったって思うよ。



たとえ猫でもこの広い部屋に一人でいるよりはマシだ。



なんだか日に日にすれ違う時間が多くなっている。


一緒に住んでいるのに寂しさは離れていた時よりも増したような気がする。


「よぉし！おいしいシチュー作るぞ！」


半分ヤケクソの私は着替えを済ませ気合いを入れてエプロン姿でキッチンに立つ。


広すぎるキッチンに材料を並べ調理開始。



タマは退屈そうにソファーの上でうたた寝を始めた。


ザクザクザク……


野菜を切る音がなんだか虚しく部屋に響いた。