キミのとなり。
「だから!さくらちゃんといえばデビュー当時“グラビア界に突如舞い降りた天使”とか言われてたコでしょ?今やトップ女優にまで登りつめた注目度ナンバーワンの!!」



やたら饒舌にそう話す私をまた呆れ顔で見つめる仁。


「どこのキャッチコピーだよそれ。」



「仁知らないの!?CMにもよく出てるじゃん!ほら確か今、携帯のCMに出てる。」



「俺あんまテレビ見ねぇし……。」


「………だよね。」



仁は立ち上がり食器を片付ける。



「でも主演女優の顔ぐらい知ってないとまずいんじゃないの?」



「明日顔合わせがある。」



「あっ……そうなんだ。」



でもよく考えてみると……



あんなかわいい女優さんと仕事するんだな……。



冷静になってやっと事の重大さに気付いた。



またひとつ、大きな不安要素が増えた事に遅ればせながら気付いた私は顔を真っ青にして思わず箸の動きを止めた。



その様子を見て食事を済ませた仁が立ち上がり食器を片付けながらボソッとこうつぶやいた。


「お前も忙しいねー一人で興奮したり落ち込んだり。疲れないか?」



仁の無神経な発言に本気でムッとなる。



「つっ疲れるよ!!誰のせいでこっ……こんな」



言いかけてやめた。



《お前が勝手な想像してるだけだろうが!!》なんて、言われるのがオチだ。



不機嫌に口をつぼめる私を見て心境を察したのか、仁はすれ違い様に私の頭をぐしゃっと掴んでこう言った。


「人気者の彼氏を持つと大変だなぁー。」



そう言うと仁は振り返りもせずまたソファーで寝ているタマに一直線。



でもその何気ない一言がむちゃくちゃ嬉しくて、ポッと顔を赤らめた。



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