キミのとなり。
「……おい!こら。」


「ん?」


「泡……」


へ…?



仁が自分の服を指差す。



「あ…」



べっとり泡まみれになった仁の服。



「…………。」



「弁償しろ。」


真顔で仁がつぶやく。



「そんな折衝なぁ~。」



甘えた声と上目使いをしてみせると仁はまたいたずらな笑顔で私の首を締めるフリをした。


「弁償しろ~!」



「キャッやぁめて!!アハハハッ」



逃げ回る私を捕まえてそのまま勢いよく二人一緒にソファーに倒れ込んだ。



ドンッ!



「キャハハっ…イッタァ~。」



「…………。」



さっきまでのふざけた様子とは打って変わって仁は真顔で私を見ていた。



私は仁の首の後ろにゆっくり手を回す。



「…ねぇ」



「ん?」



こういう時だけの猫なで声……。



「チュウして」



「…あぁ?」



「んっ」と、口をつぼめて待つ。



10秒経っても反応がない。


うっすら目を開けると……


「そんなカサカサの唇にするなんて俺のプライドが許さねぇ。」


そう言って、仁は私から離れた。


「んん~!!もぉっ!」


バシバシと仁の顔を叩くフリをする。



「据え膳食わぬは男の恥なんだよ!?」



バタバタと振り回す私の腕を仁は次の瞬間、ガシッと掴んでこう言った。



「……お前、よくそんな恥ずかしいセリフ言えるねぇ。」



「……え?“女の子からチュウせがまれたらしなきゃ損!”って意味じゃないの?」



「それ、なんか違う。」



「えっ!そうなの……!?あっそっか、喰うって……どういう意味だ??」



私が一人考え込んでいると仁はゆっくり私の唇に自分の唇を近づける。



そして唇が触れる直前にこう言った。



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