キミのとなり。
リビングでコーヒーを飲みながら二人でくつろぐ。



「それでどうだった?今日の仕事。」



「ん?まぁ、普通。」


ふっ普通って…



「やっぱいつもの歌番組の打ち合わせとはまた違う感じ?」



「まぁな。」



言葉数少なくそう答える仁。


まぁいつもの事だけど。



本当はあの“柏木さくら”て女優の事を聞きたい。


何話したの?近くで見てどう思った??



聞きたい事は山ほどあるけど……



『ゴクゴク……』



でも、隣で優雅にコーヒーを飲んでるこの人はそういう嫉妬とか束縛が大嫌いだから、思っていても聞けない事のほうが多い。


「ハァ。」


「何だよ。」


「えっ!?あっ。」


無意識に溜息が出た。


「あっ!そっそうだ!あのさ、今度友達が結婚するんだけどね、お嫁さんがマイクロシティの大ファンらしいのよね~」



咄嗟に弘人の話を振ってみる。


「ふぅん。」



丸っきり興味を示さない仁。



「でっでね!!」



気合いを入れて身を乗り出す。



「ちょっと頼まれた事があるんだけどぉ」



「出ないぞ、俺。」



私が口を開くより先に仁はあっさりそう言った。



「まっ、まだ何も言ってないし。」



「どうせ俺らが飛び入り参加して歌って欲しいとか言うんだろ?」



うっ鋭い。



「んな面倒臭せぇ事やってられっか!俺らは忙しいんだよ!」



立ち上がりカップを片付ける。



「やっ、ちょこっと!ちょこっと出るだけでいいからさ!」



その後ろについて必死に説得するが仁は足を止めない。



「んな事してなんのメリットがあんだよ!」



「メッメリットは、ないかもしれないけど。」



「知らねぇ奴らの結婚祝う程、俺らは暇じゃないっての!」


そう言いってスタスタと寝室へ向かおうとする仁の服の裾を後ろから思いっきり引っ張った。



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