キミのとなり。
やっぱり嫌い。
はぁー今日も疲れたぁ。



パンパンに腫んだ足で家路に着く。



残業ですっかり遅くなっちゃったよ。



“トコトコトコ……”



いつも通る暗くて人通りの少ない道。



今日は益々暗くて不気味。



“トコトコトコ……”



《トコトコトコ……》



ん?



自分の足音とは違うもうひとつの足音がする。



なんとなく早足になると、その足音も後を追うように早足になった。



“トコトコトコ……”



《トコトコトコ……》



えっ……



気のせい?



誰かに付けられてる?



チカチカと今にも消えてしまいそうな外灯の下で思わず足を止めた。



すると、もうひとつの足音もピタッと止まる。



やっぱり……



誰かいる。



だんだん怖くなって、走ってその場から離れた。



“ダダダダッ……”



息を切らしながらただひたすらマンションまで猛ダッシュした。



《ダダダダッ……》



まっまだ付いてくる!



ヤダヤダ、怖いよぉ~。



半分泣きそうになりながら、やっとの思いでマンションの入口に着いた。



『はぁ~、なんとか逃げ切った……。』



そう思って振り返った時だった――



「おいっ!」



ヒィィィッ!!



目の前に息を切らせながら汗だくになってこちらを睨み付ける男がいた。



足音の犯人は『仁』だった。


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