キミのとなり。
「ちょおっと!!」



「コラッ引っ張んなっ!」



「あんた最近コレなんじゃない!?」



そう言って鼻の前でグーを作り天狗の真似をして見せた。



「はぁ!?」



「前はファン一人一人に感謝の気持ち持って仕事してたんじゃないの!?それがちょっと仕事が増えてきたからって何その言い方。」


「お前……」



あっ…ヤバイ。色んな事のモヤモヤやイライラが良からぬ形で口をついて出て来た。


「お前喧嘩売ってんのか!?」


「っとっとにかく!考えて見てよ!知らない仲じゃないんだから。」



「え?」



げっ!口が滑った。



「もしかして、あの頭の悪い女か。」



頭のわるい?



「やっ若菜ちゃんじゃないよ!?あの子まだ結婚しないから。」



先を越されてたまるか!!


「んじゃ、誰。」



思わず下を向く。



「だから!それは……。」


私の顔を覗き込む仁。



まぁ、どうせ隠しててもわかる事なんだけど。



意を決して話して見る事にした。



「……ろと。」



「はぁ?」



「だから!ひ……ろと。」



「ひろと……?」



私の心臓がバクバクと飛び出しそうな勢いで鼓動をうつ。



考え込んでいる様子の仁はそのうちパッと閃いたような顔をして私を見た。



キッキレた!?



「誰それ。」



ガクッ!!



「ちょっ!何で覚えてないのよぉ!いっぱい相談のってくれたっ……。」



「……。」



「くせ……っに。」



仁は動きを止めた。



「もしかして、お前の元カレか?」



ドキンッ!



眉間にしわを寄せながら私の顔を覗き込む。



しばらく間をおいて私はコクンっと小さくうなずいた。


案の定、仁の怒鳴り声が部屋に響き渡る。




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