キミのとなり。
駅に向かう途中でマイクロシティのポスターに群がる女子高生を見つけた。



やってるやってる……。



彼女たちは周りをキョロキョロ気にしつつポスターを剥がし始めた。



『やったぁーポスターゲット!!』


『このジン超かっこよくない!?』



『本当だ~超ヤバイ!』



彼女たちは大はしゃぎで盗んだポスターを眺め、大事そうに綺麗に丸め胸に抱き抱えて去って行く。


ちなみに、君達それ……犯罪だから。


隅に無理に剥がそうとして破れたポスターが一枚だけ残っていた。



ゆっくりその前で立ち止まりポスターを見上げる。



そこには女子高生の憧れの的『ジン』がいる。



全国の女性ファンを魅了し続ける『ジン』がいる。



実はこの人、私の彼氏です!



私、今この人と一緒に暮らしています!



もし私がそう叫んだら、どうなるだろう。



きっと誰も信じてくれないだろうな。



ふと我を忘れてボーっとポスターを見上げる私の背後で、数人の女の子が怪しげにこっちを見て何やらヒソヒソと耳打ちをしている。



その様子を見て我に返った私は、早足でその場から離れた。



後ろでクスクスと笑われているのがわかった。



確かに今のは、変だったよね……。



ただの熱狂的ファンみたい。



あの時は……



一緒に住もうって言われた時は仁の言葉がうれしくて、例え世間が私の存在を知らなくても仁だけがわかっていてくれればそれでいいと思っていた。



なのに……



人間って欲張りだな。



どんどん現状じゃ満足できなくなってきてしまう。



厄介な生き物だ。




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