キミのとなり。
『でも、神田さんってほんっと男前だよねぇ~。』



『うちの社員の中じゃイチバンだよね』



勝手な想像で口々にそう話す彼女達。



『浮気とか絶対しなさそうだよね!』


そっそれはどうかな。


『あの笑顔で嘘はつけないでしょ!』



『ダヨネ~!』



ふぅん……。いいイメージばっかりなんだな。



ちらっと窓際の弘人を見ると、太陽の光りでまた一段と笑顔が眩しかった。



私もあの笑顔に嘘はないと信じてたんだよな……。



昔の事、掘り返しても仕方ないけど。



弘人に裏切られた時、もし仁がいなかったら私は今もきっと……


弘人を許せずにいただろう。



あの笑顔を見る度に、憎らしさが込み上げたに違いない。



こんな穏やかな気持ちで見つめることはできなかっただろうな。



仁に感謝しないとね。


『……っさん!小原さん!』



ハッ……。



ふと我に帰る。



「ごめっ何々!?」



『じゃー小原さんは今、彼氏とかいないんですか?』



みんなの目線が一斉にこっちへ向いた。



彼女達はニヤニヤした顔で私の答えを待っている。



でも、どう答えていいか。



正直わからない。



“いるよ”って言っていいのか……。



それさえも、いけないことなのか。



『いないんですか?』



長い沈黙が続き待ち切れず私の真横に座る子がそう聞いて来た。



「えっ…」



また言葉に詰まる。



「あっいやー今は、……」



『……?』



「いっ……いないかな」



『へぇ~意外だなぁー。』



私の答えを聞いて彼女らはまた口を揃えてそう言った。



ごめんね仁……。



私今、仁の存在を消してしまったよ。








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