キミのとなり。
「おいっ!お前何ボサっとしてんだよ。邪魔だっつーの!」


玄関で物思いにふけっていると、背中からそう声をかけられた。


「はっ早くどいて~!」


声の主は、引越しの手伝いに来てくれた親友の晶子と晃だ。


重そうな洋服ダンスの両サイドを二人で持ち上げている。


「あっごめ!」


慌てて道を空けた。


「つーか、これどこに運ぶんだよ!」


「あっこっちこっち!」


そう言って、かに歩き状態の晃達を部屋の奥へ案内した。


“ドンッ”


「はぁ~、お前タンスの中身ぐらい出しとけよ!重ぇよ~。」


額から湧き出る汗を拭う晃。


「ごめんごめん。」


次々に家具が運び込まれ、私の部屋がどんどん出来上がっていく。


なんだか見ているだけでテンションが上がった。


荷物を運び終え、約2時間程で引っ越しは完了した。


「ほんと助かった、ありがとう~!」


「なんかおごれよ。」



汗だくの晃がボソッとつぶやく。



「そんなぁ……これから一人暮しでお金かかるのに?」



「デサイナーズマンションに住もうとしてる人間の言うことか!」



「へへ……、だね。」



「まぁまぁ、いいじゃん!千秋の新しい門出を応援しようよ。」



隣で晃の額の汗をタオルで拭きながら晶子が言った。



晶子と晃は、高校の時のクラスメート。



二人は当時から付き合っていて、もう結構長い。



子供っぽい晃をいつも晶子は引っ張りフォローする。



バランスのとれたカップル。



私は、そんな二人にいつも憧れていたんだ。


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