キミのとなり。
そう顔を伏せた時だった。


どこかで聞いた声が耳に入った。



「ちょっとぉ!!何フラフラ出歩いてんの!」



その人物は佐田さんだった。



佐田さんは私の腕を掴んで人目の付かない場所へ連れて行き、眉間にしわを寄せつつ私に怒鳴る。



「買い物袋なんかぶら下げて!!誰かに見られたらどうすんの!」



「えっやっだって夕飯の買い物が…」



「そんなもんは人目に付かない時間に済ませなさい!それでなくてもジンの周りじゃスクープ欲しさにマスコミがあちこち嗅ぎ回ってるんだからね!」



チラチラと辺りを気にしつつそう話す。



「えっ…マスコミ?」



「そうよ!旬の芸能人ってのはね、ただそれだけでマスコミの標的になりやすいんだから。」



「えっ……でも、私一人なら別に問題なっ」



「ったく、その自覚のなさが命取りなのよ!ジンと付き合うって事はねぇ!」



キョロキョロと周りに目をやり急に小声になった。



『ジンのアーティスト生命も半分受け持つって事なんだからね!!』



佐田さんの口から次から次へと出てくる言葉に圧倒され言葉を失った。



「気をつけて行動しなさい!」



そう言うと佐田さんはまた車に乗り込み去って行った。



《いい!ジンと付き合うって事は、アーティスト生命も半分受け持つって事なんだからね!》



佐田さんが言った言葉が重く私の肩にのしかかる。


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