キミのとなり。

隠れ家

終業後、何故か早る足で会社のロビーを通り過ぎる。


なんなんだあいつ。


普通の顔して運命の出会いだなんて。


ピタッと一瞬足を止める。


もしかして私、おちょくられてる！？



ブツブツ独り言を言いながらまた歩き出す。



「せんぱぁ～い！」



会社を出てすぐのところで背後から声がした。



振り返ると大きく手を振りながら走ってくる若菜ちゃんが見えた。



「おぉ！今帰り？」



「はい！よかったら途中まで一緒に帰りましょ。」



私達は、久しぶりに一緒に会社を出て足並み揃えて駅へ向かう。



その内、若菜ちゃんが口を開いた。



「先輩、今どこに住んでるんですか？」



その質問にあまり大きな声で答えられない私は、キョロキョロと辺りを気にしながら若菜ちゃんに耳打ちした。



「えぇ！そんな所から！？」


彼女は私が余りに遠くから来ている事を聞いて驚きの声を上げた。



「そうなの。前は近かったからゆっくり出勤できたけど今は朝が辛くって。」



そう話す私に彼女は、もっともらしい言葉を私に投げ掛けた。



「だったら会社辞めてもっと近い所で働けばいいじゃないですかぁ～スーパーのレジとか。」



勿論、それも思い付かなかったわけではない。



だけど、簡単にそうできる程私の未来は保障されてなどいない。



「もしかして、お金の心配とかしてます？」



「だってほら、別に結婚してる訳じゃないから。」



私がそういうと一瞬キョトンとして若菜ちゃんは私の目を見た。



「でもいずれするんでしょ！？」



彼女の大胆発言に思わず黙り込む。



何も答えない私を不思議そうに横で見ている。



「先輩？」



「ねぇ、若菜ちゃん。」



「はい？」



「今からウチ来ない！？」


私のその表情から何か話したい事があるに違いないと察したのか若菜ちゃんは、少し間を空けて答えた。



「じゃー、お二人の愛の巣拝見しちゃおっかな！」