キミのとなり。
「なっなんですかこれ!!超ひろ~いっ!」



30畳はあるリビングに若菜ちゃんの声が響く。



「私もさ、最初見た時は今と同じ反応だったよ。」



「さっすが~芸能人は規模が違うな~規模が……。」



「ったく!広けりゃいいってもんじゃないっつうの!掃除する人の身にもなって欲しいよ。」



「あ~なんか今の……」



冷やかしの目で私を見る若菜ちゃん。



「主婦っぽーい!」



ボッ!っと点火されたように私の顔が赤らんだ。



「いっいいから早く座って!!」



私は彼女の肩に手をかけソファーまで押し進める。



「もぉ~照れちゃって。」


若菜ちゃんはそう言いながらソファーの上に目をやった。



はぁ~、調子狂うなぁ。



頭を掻きながら食器棚からコーヒーカップを取り出そうとした時だった。



『あぁぁあ!!』



背後で若菜ちゃんがそう叫ぶ。



驚いて後ろを振り返ると、若菜ちゃんはソファーでくつろいでいるタマを指差していた。



「せっ先輩!この猫もしかして!?」



タマはその声に驚く様子もなく毛繕いをしていた。



「そうそう!あの時の猫だよ~。」



そう言って私はタマを抱き上げいつものように頬擦りをした。



タマは私に抱かれうれしそうな鳴き声をあげる。



「へ~!まだ飼ってたんですね。」



「うん。一時は仁の事務所で預かってもらってたんだけど、ここに住むようになってまた引き取ったんだ。」



「へー意外と動物愛好家なんだ、ジンって。」



暴れ出すタマを床に離す。


「そうなんだーほんっとタマと接する時だけは、優しい笑顔するんだから!」



「いいなぁ~。なんか夫婦みたい。」



遅れてコーヒーを差し出すとボソッと若菜ちゃんがそう言った。



「え?そんな事ないよ。」


「うらやましい……。」




若菜ちゃんが寂しそうにそう呟いた瞬間だった。




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