キミのとなり。
「禁止……されてるんだ。」



「禁止っ!?」



私はゆっくり誰にも話したことのない事情を語り出す。



「ここに一緒に住む代わりにね、事務所と交わした約束がいくつかあって。」



隣にゆっくり腰を下ろし若菜ちゃんは静かに私の話しに耳を傾ける。



「まず、基本的に私の存在は世間に知られないようにするっていうのが前提で。後は、デートはもちろん仁と外で会うことは出来ないし、マンションに出入りする時もマスコミとかファンの人に見られないように気をつけないといけないし」


「それでさっきあんなにコソコソしてたんですね。」


一人納得の表情の若菜ちゃん。



「後、今現在私達の事を知っている人以外への口外は禁止だし、だから写真みたいに形として残るものは後でどこから流出するとも限らないから禁止なんだ。」


私の現実離れした話しに絶句の若菜ちゃんは、その後深く溜息をついたと思うと急に私の手を握り締めてきた。



「そんなんで幸せなんですか!?先輩!!」



あまりの迫力に圧倒される。



「そんなアレもダメ、コレもダメなんて!!恋人の意味なくないですか!?」



久しぶりに若菜節が炸裂した。



だけどなんだかその言葉を聞いて少し心がすっきりしたような気分だった。



それはもしかすると言いたくても言えなかった……



私の本心なのかもしれない。



代わりに若菜ちゃんが吐き出してくれたんだ。



「まっ、まぁまぁ……。」


まだ怒りのおさまらない若菜ちゃんの腕を、なだめるように引っ張りソファーに座らせる。



「先輩はそれでいいんですか!?あたしだったら絶対ヤダ!ストレス溜まっちゃいますよぉ。」



「そうだね。」



「こうっ、無理にでも連れ出して大勢の人が行き交う交差点で抱き合ってキスとかしちゃいますよ!!」



さっさすが……感情がストレート。



「日陰の女なんて絶対ヤダ!!」



自分の事のように目を吊り上げてそう話す。



若菜ちゃんのように自分に素直になれる性格なら楽だろうなぁ……。



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