キミのとなり。
「じっ仁!」



仁は鋭い目付きで、ゆっくりこっちに近づいてくる。



『俺、別にあんたと付き合ってんじゃねぇんだけど。』


「……。」



「……ちょっちょっと!」


今にも掴み掛かりそうな雰囲気。



「あっ聞いてました?」



超マイペースなその返答に拍子抜けした表情を見せる仁。



沈黙に耐え切れず私が口を挟む。



「かっ帰ってたんだ!ってか早いねぇ今日は。」



私の問い掛けにも答えない。



ヤバイ、相当キレてる?



「あっ先輩、そろそろあたし帰りますね!」



そう言って立ち上がり若菜ちゃんは仁にペコッと一度頭を下げると早足で荷物を持って部屋を出ようとした。



『おい。』



若菜ちゃんが目の前を通り過ぎると仁は低い声で呼び止めた。



その声に足を止める若菜ちゃん。



「はい?」


ヤッヤバイ展開……



ゆっくり仁の方を振り返る若菜ちゃん。



仁はうつむき加減で目を閉じたまま一言こう言った。


『また話し、聞いてやってくれ。』



そして黙って寝室へ入っていった。



私と若菜ちゃんはただただ呆然とその場に立ち尽くし見つめ合うだけだった。





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