キミのとなり。
デートの帰り、弘人がいつもの様にマンションまで送ってくれる事になった。



二人で歩いていると、突然弘人の携帯が鳴った。



ポケットから携帯を取り出し、着信を確認する。



「会社からだ。」



弘人は出ようかどうか迷っている。



「いいよ、出て。」



「わりぃ……。」



そう言って申し訳なさそうに私から離れ、電話に出る。



しばらく話し込んで電話を切った弘人が、こっちに近づいてきた。



「千秋本当ごめん。急な用事で会社に行かなきゃならなくなったんだ。」



「……そう。」



今日は部屋に招待しようと思ってたんだけどな。



でも、自分だけわがまま言うわけにいかないよね。



「うん、わかった。一人で帰れるからいいよ!」



無理してニッコリ笑った。



「また電話する!」



そう言って弘人は、タクシーに乗って会社へ向かった。



シーンと静まり返る、いつもの通い慣れた道。



なんだか急に寂しくなった。


トボトボと歩いている内に、雨が降り出した。



せっかくの巻き髪もびしょびしょ……



なんか、複雑な誕生日だな。


――マンション近くの公園の前を通った時だった。


《ニャーニャー……》



どこからか、か細い子猫の鳴き声が聞こえてきた。



捨て猫かな?



こんな雨の中、可哀相に。


ゆっくりその鳴き声に近づいて行くと、私の目にある光景が飛び込んで来た。



思わず足を止めてその光景に見入る。



そこには、仁……



あいつがいた。
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